退職金への増税を検討

 政府税制調査会(中里実会長)で、多様な働き方を促進するための手立てとして、退職金への増税が検討されています。近年、高所得者の退職金に対する課税強化が続いており、再び“経営者いじめ”が始まったものといえそうですね。
 10月に開かれた政府税調の会合では、「多様な働き方を選びやすくする」との狙いのもと、所得税のあり方を議論しました。現在の退職金に関する税制は終身雇用制度が前提となっており、勤続20年を超えると1年あたりの控除額が増える仕組みとなっています。会合ではこの仕組みが転職をためらう要因になっているとして、委員からは「控除は勤続年数で差を設けず一律にすべきだ」といった意見が出ました。
退職金は、会社として多額の費用を計上できるうえ、受け取る側も退職所得控除、2分の1課税、分離課税と3層もの税制優遇を受けられ、さらに株価を引き下げる効果もあることから事業承継対策をも含めた経営者の節税対策の王道です。だがここ10年ほど、退職金の税制を巡る課税強化が続いています。
 2012年の税制改正では、多数の関連企業に短期間で役員に就いては退職する「渡り」を防ぐため、在職期間が5年以下の役員が課税対象額を2分の1とする退職所得の優遇措置(2分の1課税)の対象から外された。さらに21年の改正では、在職5年以下の役員以外についても、控除後の退職所得金額が300万円を超えた部分に限るという条件付きながら、2分の1課税の対象から除外となりました。
 21年度与党税制改正大綱では、諸外国の制度を参考にして退職金を含む老後の資産形成に関する税制の抜本的な見直しを行う方針も示され、参考にするとされる諸外国では、そもそも米国のように退職所得控除のない国もあります。

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